ダリ展:2007年4月30日?・大阪サントリー天保山ミュージアム
 兎に角途轍もなく人が多かった。しかも美術館の構造も最低で、展示してる5階に行く手段が二台のエレベーターだけ、そのうち一台はどういうわけか稼動してないという有様。人数調整のためか?にしても、あそこ火災とか起こったら客をどうやって避難させるつもりなんだ。

 愚痴はさておき。

 初期の絵はどう見てもカルターニャの素朴な風景を描いた印象画家といった感じで、ピカソの17歳頃の絵を見たときと同様の驚きを覚えた。断わっておくと、人が順路上の絵にびっしり張り付いて義務のようにゾロゾロと鑑賞を続けているので、全編に渡ってあまりきちんと見られてません。

 一部の好きな絵(想像に難くないことだろうがタイトルを逐一挙げられない、何でって憶えきれないからだ)、それから写真とオブジェと書き物の類は、垣間見た程度とは雖も非常に興味深かった。

 素描などを一瞥しても、いやしなくてもよく分かることだが、(しかし絵画の類に疎い私にはいまひとつよく分かっている気がしないが、)ダリの絵を描く技術というのはかなりのものだ。この類のアートは敬遠されがちなのに、ダリやマグリットが人口に膾炙しまくっているのは、そういう「口当たりの良さ」が原因かもしれないなどと思う。この来場者の多さを見ても断言できるが、間違いなくダリはキャッチー。

 加えて、その技術を存分に生かす分野を次々に開拓して、自らの想像力を遺憾なく発揮したところも大きい。イマジネイションは無意識に属するが、開拓や物質的な創造は意識に属する。書き物の類や芸術論を物すのも後者だ。この両方がどちらも活発に活動しているように見受けられるのは私だけか、いや、そんなことは別にどうでもいいし、賛同してもらう必要もないし、多分誰もこんな日記読んで面白いとは思わないだろうな?兎に角、物を作るというのには思いのほか沢山の条件が必要で、私なんぞ諸条件の不足でもどかしい思いをすることが多々だから、其処んところ感歎するわけ。羨望まじりに。

 ところでダリの何が好きかと聞かれたら、行動全てで表現を行ったという点に尽きる。彼の奇行がほとんどパフォーマンスだったという話は、或る人には落胆に値するかもしれないが、私には幾許かの安堵を齎した。

 しかしまあ本当にアホほど人が多かった。絵の前で不平混じりに「意味わかんねーよ」とか云ってた若い男(それは大体予想できた事ではないのかね?)よりは『催淫作用のあるタキシード』の前で「こんなのなら作れるかも」って云ってた小学生女子と思しき生物の方が素敵だし、父親の手にぶらんぶらんぶら下がりながら「こっちの方が不気味だね」を連発していた幼子は是非そういう感覚を忘れずに大きくなって欲しいものだ。

 新たな発見物で面白かったのはダリシネマとかいうドキュメンタリー。2003年に作られたもので、特に筋や説明じみたものはないのだが、扇を顔の前に構えてのインタビュー、オープンカーに乗っての皇族さながらの凱旋、闘牛場での派手な催しなど、余り知る機会の少ないダリ本人の様子が見られてよかった。DVDも発売されているが、財布のためになんとかレンタルで見たいものだ。(映像と云えば、驚くべきことにアンダルシアの犬がなかった!)

 ヴィーナスの夢だったっけ、NYの万国博覧会のパヴィリオンの写真も面白かった。若いときのダリはイケメンすぎてしびれる。

 それから……唇のソファが背景もきちんと整えた形で置かれてて面白かったのと……モンテーニュの挿絵を描いてたのも意外だったな……きちんと見なかったけど……。 レダの椅子だったかなんだったかはとても所有したい思いに駆られた。家具の類はどっかが作って売り出せば相当売れるに違いない。あんなのが生活の一部にあったら素敵じゃないか。

 ダリは商業分野で大いに活躍した所為で他のシュルレアリスト達から非難を食らっていたが(ドル逃亡者、だっけか?)一人の人間が持つものを生かす場所が沢山あったというのは単純に喜ばしいことだと思う。

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夢の美術館展:2007年2月27日・大阪国立国際美術館
 たいそう広い美術館だった。今回のコレクションは会場である国立国際美術館を含む3つの美術館から作品が来ていることもあり、内容も充実。今度開く近代美術館からの提供が一番自分に合ってたと思う。図録についてる美術史年譜が張り出されてたので見てたけど、1950年以降はぜんっぜん知らなかった。というかそれ以降はもう未来なんじゃないかと(笑)私にはダダとかシュルレアリスムのあたりがモダンで刺激的で斬新です。いや、もちろん以降でも「うはっ」てなるのはあるんだけどね。年譜欲しかったけど図録は買ってません。

 ざっと羅列するとーセザンヌ(1枚)、モネ(1枚)、ピカソ(1枚、ただしB2フロアで彫刻メインの展覧開催中)、モリディアーニ、ピカビア、デュシャン(お兄さんの彫刻もあったよ……兄弟いたのか……)、マン・レイ、パウル・クレー、カンディンスキー、デ・キリコ(1枚)、ダリ(1枚)、マグリット(1枚)、エルンスト、ジョセフ・コーネル、アルプ、ジャコメッティ、ウォーホル、などなど。

・ピカビアの作品は揚羽蝶の標本が使われてたんですが、思わず近寄って展翅の出来具合をチェックしてしまいました……
・デュシャンの「L.H.O.O.Q」は以前ネットで見て知ってたのでキターと思った。皆でデュシャンに習ってモナリザに手を加えようぜ!ってな感じの海外ページでした。
 「チェスプレーヤー」は……千夜千冊で"デュシャンがチェスをしていた時代"が理解できずひっかかってたので、「あ、そうだったんだ」となりました。
 「トランクの中の箱」は面白かったなー。ミニチュア美術館。これでwktkしてたら後述のジョセフ・コーネルが来て一気に脳味噌が沸き立った。

・平凡社ライブラリのロートレアモン全集を手に取ったことがきっかけで頭に入っていた"イシドール・デュカス"という言葉。が、今朝からずっと頭の中をめぐっていた矢先にマン・レイ「イシドール・デュカスの謎」キター。あれも読みたい

・アルプ「植物のトルソ」……にょ、女体……
 BUCK-TICKの櫻井さんが使ってた女体マイクを思い出したよ。
・シモン・アンタイの「タブラ(青)」綺麗だったなぁ……デカルマコニー?いや違うかもな、折りたたんだ布に絵の具つけてそれを開いたもので、巨大な白い画面に青の四角がならんで格子窓みたいに見える。青い絵の具の斑とかひび割れ具合とかが、鉱石のような青空のような深海のような。曇天に地下の美術館を訪れて、斯様にすがすがしい気分になるとは思わなんだ。

・彫刻の表面を全てサイコロで覆った作品がありました。トニー・フラッグの「分泌物」というやつ。『サイコロの七の目!!』とか思ったのは私だけじゃないはずだたぶん。

・今回の収穫はジョセフ・コーネル!初めて知りましたが、一発で気に入りました。コラージュよりも箱が。いいなぁいいなぁ。

・紙葉関連の脳内フォルダにぶち込まれる作品がひとつ。ルーチョ・フォンタナ「空間概念、期待」うおおおおおこれはまさしく!まさしく!そのものではないけど「あ、」って……

 ざっとこんな感じかな。

 展覧会固有のショップでは絵葉書数枚とジョセフ・コーネルのミニフレーム買って出る。TASHENだっけ、あそこから出てるイスム系の本でダダのとシュルレアリスムが欲しかったけど慌てて我慢。マグリットの画集も欲し……っていかんいかん!ようし誘惑に買ったぞ。ジョセフ・コーネルのは絵葉書じゃなくてミニフレームに手を出してしまったけど。




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