宇宙と天体の美学展 滋賀県立近代美術館

 まず始まりの一枚がデューラーのヨハネ黙示録。
 おおおおおおおお超ストライクやったやったやったー!
 まばゆい星に淑女が頂く星の冠、地上にのたうつ例の獣も素晴らしく!

 そしてその次がドレ!
 神曲!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 地獄篇!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 地獄篇第2歌、森のあたりから日没を眺めるダンテとヴェルギリウス。
 そしてジュデッカを抜けて「ふたたび星を仰ぎ見」ているやつも。
 そしてそして煉獄でダンテが見た大鷲に運ばれる夢……
 おお……マエストロ……おお……!!!!控えめに云って感動した。
 その次が『狂えるオルランド』から、ペガサス四頭立ての馬車で
 月へ向かうオルランド……読んでないからわかんないけどあれですか
 それはもしかしてオルランドの狂気と関係があったりしますか、
 ああっそれにしてもドレ、大好きだよドレ!すばらしい!すばらしい!
 手持ちの本と大きさほとんど変わらないけど、
 やっぱり平面的な印刷とは全然違う質感が……!ほろり。


 以下気に入った作品をざっと。
 配布される作品の目録がやたら詳細なので記憶の再生に役立つ。

 マックス・エルンスト「太陽・都市の全景」
 同モティーフの月の方は見たことが。あちらよりコンパクトで
 縦長のキャンヴァス。落日にも似た強烈なオレンジと
 夕焼けの影のような黒のコントラストが目の奥に刺さる。
 都市に当たると思しき、ウエハース状の黒い部分の
 或る一部から目が離せず。人のような、建築物の構造のような。

 浜口陽三「突堤」
 画面全体真っ黒。そして真っ赤な半円形の太陽。
 これまたコントラストが強烈で胸騒ぎ。

 柄澤齊『Al-Chimija 八枚の木口木版のための8つの錬金術的寓意』より、
 「日食の予兆 或は月と太陽の婚姻」
 はい。wwwwwwwww

 浅野弥衛「Work22」
 上下対象の都市、上に太陽下に月。
 鏡写しの都市とか『見えない都市』とかそんな。
 シンプルでラフな作風なんだけどこういう構想がツボ

 ジョセフ・コーネル「シャボン玉セット(月の虹)宇宙のオブジェ」
 箱きたよ箱ーーー!!
 隅々までの丁寧なつくりがたまりません。
 科学的美術っていうか科学も或る意味美術じゃね?宇宙は芸術じゃね?

 パウル・クレー「ベヨッテの街を照らす満月」
 画面全体は黒。満月が夜の闇の中の都市の輪郭をかすかに照らすような。
 幻想的、という言葉はありがちだけど、まさにその言葉がぴったり。
 御伽噺の中で語られるのみの都市をまさに目にした感じ。

 北脇昇「孤独な終末」
 幸村と前でキュンキュンしてました。
 舞い上がるタンポポの綿毛、揺らめく陰、
 割れて捲れてささくれ立った地面、赤い太陽のよどみ。
 ひとつの浮島とひとりの背中が迎える孤独な終末。
 描きこまれているもののひとつひとつを眺めていくときの
 視線のぐるぅり……とした流れとかも、こう……(語彙不足)

 鴨居玲「月に飛びつく男」
 全身全霊月に飛びつこうとする男。重力の所為か体は捩れ。
 満月はなお遠いような男を吸い寄せるような。
 でも基本的に"人間"が描かれてる絵があんまり好きじゃないので
 満月のみの絵もみたかったなー。

 高野野十郎「満月」
 タイトルと絵を逐一結び付けていかなかったので
 目録見ただけだと確証が無いんだけど。これかなぁ。
 かすかな梢の影の合間から仰ぎ見る、
 ぼんやり、くっきりと照る満月。
 多分誰にでも見覚えがあるそんな絵画的な景色のまさにあれ。
 ただただ美しく釘付けになるあれ。

 ロイ・リキテンスタイン「月の景観」
 光る素材のプラスティック板が空に使われていて。
 波うち具合でぎらんぎらんに光る。凄まじいインパクト。エキセントリック。

 菊畑茂久馬「月光 二」
 二ってナンバリングかなぁ。他にも作られてるのかなぁ。
 259.5x194.0cmという大きな大きな作品。
 上部にあるどろどろのぼこぼこが、下へ流れていくに従って
 減少していく、と云えば伝わるでしょうか。
 月の表面を(こんな風ではないと知っているにも関わらず)連想させる。
 沢山の小さな人間が流れにもがいているようでもある。
 淡いブルーのトーンという落ち着いた色合いながらもの狂おしい。
 ていうかまず大きさが圧倒される。月が間近に迫るような質量感。

 山中現「月の光'84」
 モノクロ。宇宙的、終末的、宗教的……?
 この人は全部人らしきものを柔らかな棒で描いていて、
 なんかこう……うぅん……やぁらかい……

 田中恭吉「ひそめるもの。」
 タイトルは違うかも。溢れんばかりに降り注ぐ太陽の真下で
 互いに強く抱き合う男女。太陽の光を避ける術を
 ほかに持ち合わせていないような。なんだか悲恋ぽい。
 
 ヨーハン・ガブリエル・ドッペルマイヤー「平面天球図I・VI」
 1742年。古い博物誌って芸術としか云いようが無い繊細さで描かれているね。
 色合いも線も美しい。星が等級ごとに違う形で書かれているんだけど
 それもこう……幾何学的な美しい装飾がね……。
 Iが北極星周辺でVIが南極周辺。全部つなげたら、おい、どうなるんだ!
 本当に昔の人はよく星を見たもんです…… 魔術(ry (はいはい)

 ジョセフ・コーネル「日の出と日の入りの時刻、昼と夜の長さを測る目盛り尺(アナレンマ)」
 大きなコルク球が……月だよねえ……。ああ……コルク球を月かぁ……。
 コーネルの箱は美しい。

 長谷川潔「幾何学錘系と宇宙方程式」
 キタコレ!キタコレ!そうよ幾何学よ!数学の美よ!!!!
 この人の絵(の複製だろーが)家にあった気がすんなぁ。
 薔薇見て思い出した。
 あとこの人、日夏コウ之助定本詩集の挿画も手がけているとか。

 深沢幸雄「天空を計る」
 すみませんっ。記憶がっ。

 柄澤齋「Turning」
 コーネル風箱。ちいさな貝殻の月が堪らなくリアル。
 ほんとうの月みたいだ。
 この人、上に書いた日蝕の版画でもツボったんだよなー

 柄澤齋「星盗り」
 星を盗るのです。一千一秒物語みたいだね。
 歯車いっぱいあったのはこれだっけ。箱いいなあ箱。

 ジェイムス・ギルレイ「太陽神ヘリオスの息子ファエトンへの警告!」
 風刺画なんだけどなんだよこの忠実なパロディはwwwwwww
 色といい線といい無駄にきちんとwwwww(褒めてる)

 黒崎彰「星の神話」etc
 この人のはどれもよかった。黒地に金で描かれた星座って最強すぎる。
 金がこれほど美しく見えるのは黒の上以外にないね。
 どぎつくなりがちな原色を組み合わせた枠も黒の上では緩和される。
 「星の神話」は12枚の連作です。いいなあいいなあ。

 吉田穂高「星座風景」
 GEMINI、CANCER、LEO、SCORPIO、CAPRICORN、PISCESの六枚。大き目の作品。
 これは凄くよかった。
 星座にまつわるモティーフを風景の中に配置したものなのですが、
 色彩も構想もすっごい斬新。でも1973年作品。

 山中現「第二夜」
 ああそうだ、SF的な物語なんだ。この人の絵から見えるものって。

 堂本尚郎「惑星B 沈黙」「惑星W
 惑星Bはチャコールグレーにグレーだったか。兎に角灰色トーン。
 惑星Wは白。大きなキャンバスに円をしきつめるように配置したもの。
 どう色を具合すれば、あんな眩すぎない太陽みたいなものが描けるのかしら。
 自ずから光るようでした。

 スタンリー・ウィリアム・ヘイター「ブラックホール」
 捩れたボーダー、捩れたチェッカー。
 重力がねじれて一点に収束していく。まさにブラックホール。

 吹田文明「星を抱くC」
 他にもいくつかあったかな。SF的な、惑星の上にあってなお宇宙的な景色。

 柄澤齊『死と変容』第一集 夜より  「この星の名は…」「夢または旅路」
 木版。んー……物語を作りたい景色。
 今書いていて分かったけど、この人の作品多いなwww

 第二集 洪水より「洪水A」「洪水B」「洪水C」
 連作というより経過を辿るのかな。
 とりわけ洪水Aがお気に入り。宇宙に浮かぶ長円形の"たまご"の中に
 水と隆起する大地。ボッシュの「快楽の園」を閉じたときのあれ、
 あるじゃない。宇宙卵的な。転地創造前の。あの球体。あんなの。
 あー、この人の作品集とかあったら買うのにな。
 とりあえず皆様にこれ
どうぞ。

 柄澤齊「Star Sprinkler」
 コーネル風箱。歯車(時計部品)萌え。
 これの筒で空を見るんでしょう。宇宙をその脳裏に納めるんでしょう!

 柄澤齊「クロノスの杯」
 大きめの画面いっぱいに、淵がぎざぎざした杯が。
 杯は樹木の根や枝の絡み合ったものを、更に切り貼りして作られたような。
 薄いのになんて分厚い杯なんだろうと思った。
 杯の中?それは……一条の光も差し込まない黒。
 ……それは……何かって……?

 齋藤修「ネヴァーランド・メリフリュウス I,V,VIII,X」
 星というよりも鉱石の宇宙。銀河鉄道の夜、と云ったほうが伝わりやすいかも。
 きらめく眩さとぬばたまの闇が共存する光景。

 野村仁「午前のアナレンマ」「正午のアナレンマ」「午後のアナレンマ」
 写真作品。アナレンマってなんだ。
 コーネルの作品によれば「日の出と日の入りの時刻、
 昼と夜の長さを測る目盛り尺」だが。なんのこっちゃ。
 夜明けとも夕焼けともつかぬ景色に八の字を描く光る天体。
 科学的にはよくわからん。美術的には物凄く美しい。

 野村仁「自転と重力―補陀落の海へ
 写真作品。1枚・2枚・3枚と、パネルがピラミッド状に繋がっている。
 下の2枚・3枚のところは星が円を描いて回る様子のあれ。
 上の1枚は……何なんだろうなぁ。空の写真が
 重力でずるりと縦に引きずられたような。
 てかこのタイトルはねーだろ。反則だろ。補陀落の海て。
 胸がぶっ壊れます、こんなこと云われたら。

 金山明「アポロ、アムール小惑星起動
 惑星の軌道をプリントアウトしたもの。
 科学的には良く分からんが美術的にはPart2.
 もう……宇宙やばい。何なんだ。宇宙。

 植松奎二「Drawing-cosmos
 宇宙をモティーフにした小ぶりの絵が壁いちめんに。
 指差してアレがすきだのコレがすきだの。


 まー本当に色んな絵がありましたが、
 でこぼこしたいびつな円の惑星とかは余り好きじゃありませんでした。
 何回も書いたように、天体の魅力として幾何学的な美というのは
 欠かせないのと思うので。
 勿論、遠くからだから円に見えるのであって、
 実際に全ての惑星が数学的に完全な円をしているわけではないですけど。
 太陽にしても満月にしても、なんてまるいんだろう!と
 驚いたことは、誰にでもあるのでは。

 惑星や宇宙というのはなんて魅力的なものなんだろう。
 色んな鉱石を使って太陽系を再現したらさぞかし楽しいだろうと
 思っていたけど、あんな風にして作品を作ることも
 天体や宇宙を触る方法の一つには違いない。
 そしてああして芸術は各々が
 自分の天体を手に入れるんだ。

 滋賀県立近代美術館は文化ゾーンという森の中に位置していまして、
 秋も深まりかけた森の中で連れと存分に遊んでから京都へ帰りました。


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