人の姿をし、人の言葉を操り、人の声音を持つ。
果たしてそれは人か?
人とは何か?
全てそれらは一つの 原型
より出ずる生き物。
本質は羚羊に似ている。
皆似たり寄ったりで、異質の存在しないことを好む。
互いに争うことを厭い、安穏な世界と人生を好む。
危険に敏感で、逃げる脚は素早い。
彼らはみな、神の前で(無力な・従順な)子羊である。
果たしてそれは真実か?
羊の、
人の原型は、神の手による。
全くの無から有を生じさせるのは神のみに可能な業である。
そしてその業には一片の翳りも存在しない。
果たしてそれは真実か?
被造物はいつも神の予測せざる要素をいくらか孕んでいる。
そして、人の原型は神が分け与えた「つくる」能力を携えている。
羊の型から生まれた山羊とまでは言わないが、その非凡さゆえに眼を見張る存在は稀代のものではなかった。
そしてこれからも そうではない。
囚われること無き大胆且つ奔放な魂。
消えぬ劫火の如き烈しさ。
無から有を生じさせる業。
彼らは人にあって人にあらざるものになる。
時とその業が名前を変えるだろう。
天才、英雄、芸術家、聖人、逆賊、哲学者……孤高を進む異端者たちの 軌跡/奇跡 。
豪奢な壁龕に、こぼれるほどに活けられた花。
黒い衣と静かな面、敬虔な羊の出で立ち、
彼は長い髪を揺らし、轟音の中で冒涜の中指を立てる。